2013年 09月 18日
小さい頃の事がまるで嘘だったように、今や普通の小学生な息子。 もちろん、他の子と違うところもあります。未だに給食は食べられません。相変わらず数字オタクです。 でも、何がすごいって「僕はアスペルガーで他の子と違うところがある」と知っててそれでも「なんとか世の中に合わせてやってみよう」って思っている所がすごいです。とても頼もしく思います。その言葉通り、なんとかこの合わせづらい世の中に合わせて生きていって欲しいと思います。 以下、3年生より新しい担任となった学校の先生にお渡しした手紙です。もはや、一見障害があるようには見えないので、息子の障害について説明するの、本当に難しいです。 息子の『発達障害』について 息子は3歳の時『発達障害』のひとつである『アスペルガー症候群』と診断されました。 『アスペルガー症候群』とは一言で言ってしまえば『自閉症』に見えない『自閉症』なのだそうです。 自分の子供が『発達障害』、『アスペルガー症候群』と言われても私にもすぐに受け入れられませんでした。でも同時に「なんだ、やっぱりそうだったのか」とホッとしたのも事実なのです。息子が生まれてから、息子の癇癪やこだわりに、何かがおかしい、他の子と違うと感じ続けてきたからです。その理由が分かって納得したような気持ちにもなりました。 しかし、そうは言っても『発達障害』、『アスペルガー症候群』とは実に分かりにくい障害です。インターネットで調べたり、本を読んだりしてもはっきりと理解することは難しいと思います。 調べますと、代表的な発達障害にも色々と種類があるのです。 ①広汎性発達障害(PDD)・自閉症・アスペルガー症候群 ②注意欠陥多動性障害(ADHD) ③学習障害(LD) 息子は①に当てはまり、中でも『アスペルガー症候群』の特徴が顕著です。 実は『自閉症』と『アスペルガー症候群』はひとつながりのもので、はっきりと区別できるものではないそうです。でも『自閉症』などと聞くと部屋に閉じこもって出てこない人のような印象がありますよね。私自身、その偏見を完全に拭えないでいます。そのくせ『自閉症』に関する本を読むと、息子と似たような特徴に出くわし、妙に納得したりします。 『自閉症』と『アスペルガー症候群』を強いて区別するなら、『アスペルガー症候群』は一見して障害があるようには見えない。話もできるし勉強なども人並み以上にできることがあり、『自閉症』に見えない『自閉症』なのだと説明している人がいます。本当にその通りなのです。 『アスペルガー症候群』の特徴について 『アスペルガー症候群』の特徴について調べるとこんな風に書かれています。 1・対人関係が薄くて社会性の発達がわるい 2・コミュニケーションの障害がある 3・興味・活動が限られ、強いこだわり、反復的な行動がみられる(想像力の障害) とても分かりにくいですよね。 しかし、小さい頃から息子がとってきた奇妙な行動は、おおよそこの3つの特徴のどれかに当てはまるようです。今では随分落ち着いて、奇妙な行動は本当に減りました。しかし、もうすぐ3年生になろうとしている今でも、どうしても直らない行動があります。 「あいさつをしない(毎朝会う登校班のメンバーにすらあいさつしません)」 「初対面の人、久しぶりに会う人との対面を嫌がる(押入れなどに隠れてしまいます)」 「学校以外の場所で先生やお友達に会うのを嫌がる(逃げ出してしまいます)」 4歳頃、保育園で毎朝30分以上壁と向かい合ったまま固まっていた息子。しかし、1時間もするとお友達と仲良く遊び始めるのです。 理由を聞くと「夜、家に帰ると先生もお友達も知らない人になる」「朝、先生も友達もはじめて会う人だから(慣れるのに)時間がかかる」と言っていました。朝になると誰もが初対面の関係に戻ってしまうという意味なのでしょうか? 2年生の今、学校に登校するとすぐにお友達と仲良く遊んでいるそうです。 しかし、毎朝マンションのロビーで管理人さんに「おはよう」と声をかけられても目も合わさず無視します。登校班のお友達とも一言も交わさず学校に向かいます。 息子にとって朝は誰もが初対面の見知らぬ人だからなのでしょうか?それともそもそも「あいさつ」をする必要性が分からないからなのでしょうか? 土曜日や日曜日、公園やスーパーで同じ小学校のお友達に偶然会うことがあります。息子は必ず逃げ出します。逃げ出せない時は目を閉じて固まってしまいます。「あの人は学校の人だから」と言ったりします。 専門家の先生によればこれが「想像力の障害」なのだそうです。学校で会うお友達それぞれに家族があって、家庭生活があってということに想像が及ばないのだそうです。学校のお友達は息子にとって「学校で会う人」であって、その人がいきなり公園やスーパーに出現するとパニックに陥るのだそうです。 「あいさつ」も出来ず、初対面の人からは逃げる息子。しかしその反面、息子はとても「おしゃべり」です。 「おしゃべり」だなんて『自閉症』というイメージから程遠い話ですが、『アスペルガー症候群』に「おしゃべり」は多いようです。でもどこか変なのです。難しい言葉も使ってスラスラと話しますが、どこか一方的です。私の話はほとんど聞いていない事が多いのです。「おしゃべり」だけど「会話」は苦手なのです。一人で勝手にしゃべっているのです。 興味の対象に対しては、きわめて強い偏執的ともいえる集中力で、大量の情報を記憶できるのも『アスペルガー症候群』。息子は2歳頃から数字に対してものすごい執着心を持っています。ディズニーランドに遊びに行ったある日、先に荷物を預けようとすると…どのナンバーのコインロッカーに預けるか悩みに悩むのです。決めるのに20分かかりました。さっさと荷物を預けてアトラクションで遊んだ方が…と思うのですが、息子にとって数字はとても重要なものなのです。急かさなければ一日中コインロッカーの前をウロウロしていたかも知れません。ちなみにどのアトラクションで遊びたいかと聞くと「何でもいい」という返事が返ってきました。 『感覚の敏感さ』について アスペルガー症候群に良くみられる特徴として『感覚の敏感さ』があります。 ・音への敏感さ ・視覚的敏感さ(教えもしないのに文字などを幼児期に覚えてしまう) ・味覚の敏感さ(味覚の敏感さは偏食につながる) ・嗅覚の敏感さ ・触覚的な障害(ぬいぐるみなどの感触が好きでいつも撫でているなど) これらの特徴、息子に実によく当てはまります。小さい時から服を着るのを嫌がり、ダブダブの服をなんとか着せていました。体に触るのを嫌がりました。においや味に敏感で偏食です。『感覚が敏感』な息子には人間社会は生き辛い場所だと思います。 何にでも「イヤイヤ~」とする息子を見て「狼少女」を思い出した事もあります。野生の狼みたいに人間に触られるのが嫌で、服も着ないし、人間の食べ物・複雑な味付けを嫌い、音や光やにおいに過敏に反応するのです。 でもそれも今ではすっかり落ち着きました。もうすぐ3年生になろうとしている今、問題は「給食」だけです。「給食」は「白いごはん・パン」と「牛乳」と「薄い味付けの魚」と「においのしないフルーツ」だけを食べます。他のものは気が向いたら一口か二口食べる程度です。それでも息子にしてはとても頑張って食べている方です。普通の人にとって「普通」の醤油や塩の味付けが息子には「辛い」と感じます。胡椒は「激辛」です。給食が毎日「スパイシーインド料理」や「激辛タイ料理」だと辛い事でしょう。本人は「味覚に鈍感な普通の人が羨ましい」などと言っています。 『発達のアンバランスさ』について 『自閉症』の人間はもともと規則的なものを好むので、数字は大好きです。息子はその『自閉症』の中でもとりわけ数字好きのマニアです。4歳になる前に四則演算が出来、5歳で分数や小数・負の数を理解していました。まるで天才児です。 しかし一方で、自分の身の回りの事が出来ず、ご飯の食べ方も下手だし、遊びなどはとても幼稚なのです。ある面は中学生並みに発達しているし、ある面はまだ4歳児か5歳児のレベルしかないのです。『発達障害』の子供の、この「発達のバラつき」が風変わりな行動に結びついてしまう原因なのだそうです。 「あんなに難しい算数の問題が解けるのに、どうしてこんな簡単な事が出来ないの?」と私もつい言ってしまいます。息子がある面ではまだ幼稚園児である事をついつい忘れてしまいます。しかし、遅れている部分も、遅れているなりに発達していくのです。今はできない事が、ある日突然できるようになったりするのです。 普通の子供がテレビを見始めるのは1歳でしょうか?1歳半でしょうか? 息子がテレビを見始めたのは何と4歳の時でした。四則演算ができる息子が、テレビには何の反応も示さなかったのです。テレビが何を伝えようとしているかを理解できなかったのです。よその子がテレビのヒーローを真似している横で、息子は「いないいないばあっ!」という1~2歳児向けの番組を初めて理解して、夢中で見ました。テレビを見て初めてキャッキャッと声を立てて笑いました。うれしいと悲しいとが入り混じった気持ちで、そんな息子を見つめたことを覚えています。 しかし、一度理解し始めると恐ろしい勢いで理解が進むことがあるようです。今、息子は8歳の子供の理解力でテレビを見ています。いつの間にか他の子供に追いついたようなのです。 『発達障害』と知るだけで 専門書には「発達障害の子どもへの関わり方は、障害の特性を理解して接してあげることが大切…」「療育スタートは早ければ早いほど効果がある」などと書かれています。何だか難しく、読んでいると気が重く感じられる事でしょう。でも、私個人は「特別な接し方」なんて必要ないと思います。「あ、『発達障害』なの?」と知って頂けるだけで十分です。 その昔、新米ママで、ただただ「普通」に子育てしようとしていた私。ひたすら癇癪を起こして泣いて暴れる息子。いつも途方に暮れていました。 そして息子が2歳半の時、突然「普通の子育てはやめた」と思いました。息子が生まれた時、「毎日楽しく笑って過ごして欲しい」と願ったはずなのに、息子は毎日癇癪ばかりなのです。息子にたくさん笑って欲しいと思いました。社会のルールや子育ての常識を気にするのはやめました。息子が数字にこだわるなら、そのこだわりにとことん付き合いました。駐車場の料金メーターを何時間も見続ける息子と一緒に私もメーターを見続けました。それが息子には至福の時間なのですから。 その後、息子が3歳半の時に『発達障害』と診断されました。その時心理士さんに指摘されたのは息子が「言葉を使って生活していない」という事でした。言葉は理解しています。しかし、言葉でコミュニケーションする気が全くないのです。『「おはよう」「おかえり」という言葉のかわりに、毎日抱きしめてあげてください。』という心理士さんのアドバイスはとても有効でした。息子が体に触られるのが嫌いなのは知っていましたが、同時に「スキンシップを求めている」とは知らなかったのです。何だか矛盾している話ですが、ともかく、もう3歳になっていた息子を遅ればせながらたくさん抱っこしました。すると息子はとても安心するようでした。8歳になった今でも息子はスキンシップが大好きです。(ただし、予告なく突然触られるとパニックを起こす事があります。「触るよ」と予告してから抱きしめてください。) 息子は時々『総合療育センター』を受診していますが、「療育」などは行っていません。毎日の生活で「特別な接し方」もしていません。それでも幼い頃からは想像できない程落ち着いています。先天性で治るはずのない障害ですが、「治ったの?」と思える程です。障害の程度がもともと軽度だった事もあるでしょう。それでも、もし理由を挙げるとすれば、私が「普通の子育てはやめた」と思った事、ただそれだけではないかと思うのです。 ある講演会で印象的な話を聞きました。(上原芳枝氏という専門家のお話しでした) 『ある保育園に発達障害の子供が数人いて、そこの保育士達に指導をした。1年後その保育園を訪れると、子供たちはとても落ち着いていた。保育士達を観察すると、特に適切な接し方ができているわけではない。それなのに子供たちは劇的に変化した。恐らく保育士達が「問題行動にもその子にはその子なりの理由があるんだ」と知った事が原因ではないか。大人がそう思うだけで子供にはそれが通じ、子供たちが変わったのだ。』 長くて読みづらい文書を最後まで根気よくお読み下さり、ありがとうございました。 ただ読んで頂くだけで、もう十分に息子の理解者になって頂けたと思います。 本当にありがとうございました。
by xiaozhuzhu
| 2013-09-18 00:00
| 2013年(8~9歳)の息子
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